bloom


(…軽い)

抱き上げて初めて、カカシは驚いた。
力の限りを尽くして倒れたサクラ。
怪我は大したことはない。ただ消耗が激しいようだ。第二の試験終了から間を置かずに行われた予選なのだから、無理もない。
よく戦った、と思う。
才に恵まれたサスケや特殊な存在であるナルトに比べれば、サクラは普通の生まれだ。歳に似合わず頭が良くて覚えは早いが三人の中ではやや決定力に欠ける、と中忍選抜試験での動向を少しばかり案じてもいたのだ。
それが…

(本当に、成長したんだな)

短く切りそろえられた髪には、決意がこめられているのだろうか。
顔にかかっているそれを指先で払ってやる。
勝負は引き分けで、残念ながら二人とも上へは進めない。
目が覚めたらどんな顔をするだろう?
柄にもなく、ちくりと胸が痛んだ。そしてそのことに面食らった。

(こんな風に思うなんて)

大切な教え子、初めての。
だから気になるのだ。それだけだと、最初は思い込もうとした。
他に何があるというのか。
傷つけるのも傷つけられるのも、もうたくさんだった。
だから見ないようにしていた。心の底にあるのかもしれない思いのことは、考えないようにと。

…あまり見つめていても不自然だろうか。
落としていた視線を上げると、ハヤテと目が合った。
わざとらしく咳払いをしながら、審判役が言う。
「えー、次の試合を始めますので…」
「さてと…」
いのを抱き上げたアスマが立ち上がる。
「やれやれ」
とりすました表情に、それ以上何かを読みたくはなかった。
アスマと共に、それぞれの仲間が心配げに待つ方へと向かう。アスマが何やらいのに囁きかけているのが目の端に映った。
ナルトやリーが駆け寄ってくる。どうやらいつまでもサクラを独り占めしているわけにはいかないようだ。

(…やれやれ)

自分の思考に苦笑した。相当はまっているらしい。
サクラはまだ目を覚まさない。
忍びである限り、これから先もっといろいろな目に遭うのであろう少女。
今はそっとしておこう。
これぐらいで参るような子ではない。きっと自分で立ち上がれるはずだ。

次の試合の組み合わせを告げる声に、カカシは闘いの場へ注意を戻した。
今はこの思いも、胸にしまっておく。

(試験が終わったら…)

カカシはため息をついた。
暗雲の影がある。このまま無事に済むことを心から祈った。
同時に同じくらい、無理だろうなと考えていた。


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